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筆者は若い頃からへそ曲がりで、他人から勧められたものを直ぐに取り入れるなどは殆ど行った事が無い。しかし新社会人になるにおいて就職予定先から「推奨図書を読んで来い」との指示が出され、しぶしぶ従った事がある。ただこの時推奨された図書の中で現在でもその中身を思い出すものがある。それが柳田邦男著『フェイズ3の眼』という本だ。
本の内容は主として航空機事故を中心としたドキュメンタリーで、その原因分析などの過程が非常に細かく著述されている。
その個々の内容は別として紹介されていたのが「フェーズ理論」なるものである。
「フェーズ理論」とは人間の意識に関する考え方である。意識レベルを「0~4」の5段階に分け、数字が大きくなればなるほど集中・緊張しているとされる。人間の信頼性は意識レベルと密接な関連があるとされており、主に安全を重んじる職場・作業などに重用される考え方だ。
【各フェーズの概要】
フェーズ0:脳が全く動いていない状態。意識不明、睡眠中などのイメージ。
フェーズ1:意識がぼやけた状態。居眠り運転をしている状態などが相当する。
フェーズ2:正常でリラックスした状態。休憩時、安静時などが相当し、行動上は間違い操作やミスを起こしやすい。
フェーズ3:フェーズ2同様正常状態であるがより積極的な状況で、脳は好調に働いている状況である。業務中などが相当し、オペレーションミスなどは起こしにくい。但し本状態の維持は難しく、2の状態に陥りやすい。
フェーズ4:所謂過緊張状態で、緊急事態に直面したり頭に血が上ってしまったような状態を指す。このような状態を避けるために、避難訓練に代表される様シュミレーションを通して経験値を積むなどの予防策が採られる。「軽い躁」的な状態はそう長くは続かないが、ミスが少なく積極的に活動できる「フェーズ3」の目で物事を見て仕事をすれば効率よく質の高い業務が行えるわけである。
【リスクマネジメントとの関係性】
どんな仕事や生活の中での作業も一定のテンションが無ければ「ミス」や「事故」につながりやすくなり、フェーズ3を維持できる環境を整える事でこれらを排除が期待できる。=問題発生の回避が期待できるという事で「フェーズ理論」が危機回避として有用な物差しになってくるわけである。
先の原稿で「気配りがリスクマネジメントの第一歩」と記したが、この「フェーズ理論」の活用あたりが第二歩と位置付けられるだろう。
人材の配置、付与する業務、権限等々において組織管理者は色々考える事があるであろうが、このフェーズ理論を少し組み込む事で組織内外のトラブル・事故の回避に直結しそうな事は多そうだ。
読者の方々も、適度な緊張感・高揚感を以て何かを行ったとき、その結果の満足度が自身の中で高かった事があるのではないだろうか?
野球をやっていてファインプレーが出来たとか、演劇をやっていてスタンディングオベーションを頂いたとかの成功体験には、おそらくその時点では「フェーズ3」であったのではと想像する。
プロジェクトリーダーやお仕事でスタッフを束ねる役職の方々、一度本理論を普段のお仕事で照合されてみてはいかがだろうか?
「フェーズ3」になりやすい職場環境づくり=スタッフの能力開発・向上・発掘が行われやすい環境なのだから。
執筆:Y.O